1枚の処方箋に隠れた6つの暗号:BC・DIA・PWR・CYL・AXIS・ADDの読み方

目の検査が終わりました。
医師が紙を1枚渡してくれます。
「これで注文してください」
見てみます。
BC 8.5。DIA 14.2。PWR -3.25。CYL -0.75。AXIS 180。ADD +1.50。
OD。OS。
暗号です。
うなずいて帰ります。
それから3年間、その紙を読み返すことはありません。
箱に書かれたものをくり返し注文し続け、やがてそのブランドが販売終了になる日が来ます。
その日、初めて行き詰まります。
「自分の処方って何だったっけ?」
この記事は、その日のためのものです。
6つの暗号を一度解けば、どの棚のどの箱が自分の目に合うか、自分で判断できるようになります。
メガネには必要なかった2つの数字
メガネの処方はシンプルです。
度数、乱視、軸。
コンタクトレンズの処方には、さらに2つ加わります。
理由は距離です。
メガネは目の12ミリ前にあります。
コンタクトレンズは目の上にのります。
体の上にのるものは、体の形に合っていなければなりません。
靴を思い浮かべてください。
サイズ(度数)だけでは足りず、幅(BC)と長さ(DIA)も合っている必要があります。
だから6つの暗号は2つのグループに分かれます。
靴の形:BC、DIA。
見え方:PWR、CYL、AXIS、ADD。
BC:レンズのカーブの強さ
ベースカーブ(Base Curve)。
内側の面のカーブを、ミリで表したものです。
ふつうは8.3~9.0です。
ここに最初のわながあります。
数字が小さいほど、カーブが強い。
8.4は8.9よりカーブがきついのです。
大きなボールの表面はゆるやかで、小さなボールの表面は急です。この数字は、そのボールの半径です。
カーブの強い角膜には小さいBC、平らな角膜には大きいBCが合います。
BCが合っていないと、度数が完璧でもレンズがずれ動きます。
まばたきのたびに見え方が揺れ、午後には目がごろごろします。
「度数は合っているのに、何か変」というときは、たいていこの数字です。
DIA:レンズの幅
ダイアメーター(Diameter)、直径。
レンズ全体の幅です。
13.8~14.5です。
BCとDIAはセットで動きます。
BCが同じでもDIAが違えば、角膜を覆う範囲が変わります。
ここでよい知らせがあります。
この2つは選ぶものではなく、確かめるだけのものです。
製品ごとに決まった値があるので、処方のBCとDIAが箱に印刷された値と同じかどうかを確認するだけでよいのです。
PWR:だれもが知る「度数」、でもメガネの度数ではない
パワー(Power)。SPHと書かれることもあります。
近視はマイナス、遠視はプラスです。
-1.00は弱く、-6.00は強い度数です。
0.25きざみで変わります。
2つ目のわなです。
メガネの度数をコンタクトレンズにそのまま写さないでください。
-4.50のメガネをかけている人は、レンズではふつう-4.25前後が必要です。
レンズは目に近いので、同じ効果を得るのに必要な度数が小さくなるのです。
弱い度数ではほとんど差がありませんが、-4.00を超えると差が開きます。
メガネの処方でレンズを買うのは、他人のサイズで靴を買うようなものです。
このことは同じ目なのに、メガネとコンタクトレンズの度数はなぜ違うのかで説明しました。
CYL:乱視のある人だけが見る欄
シリンダー(Cylinder)、円柱度数。
乱視の強さです。
乱視がなければ、欄は空白か、「DS」や「0.00」と書かれています。
乱視があれば、-0.75、-1.25、-1.75、-2.25などと書かれています。
ここに数字が入った瞬間、選べるレンズが変わります。
ふつうのレンズではなく、トーリックレンズです。
トーリックレンズは方向によって度数が違い、目の上で回らないよう下の部分が少し重くなっています。
AXIS:乱視の向き、そして3つ目のわな
アクシス(Axis)、軸。
乱視がどの方向にあるかを、0~180度で表します。
CYLとAXISは、いつもペアで書かれます。
片方だけなら書きまちがいです。
3つ目のわなは、ここにあります。
処方には85とあるのに、箱には80と90しかない。
多くのトーリックレンズは、10度きざみでつくられています。
「近いほうを選べばいい」は答えではありません。
5度の差は、乱視の弱い人なら気づきませんが、乱視の強い人には世界全体が傾いて見えます。
検査を受けた眼科に聞いてください。
トーリックレンズが初めてなら、初めての乱視用コンタクトレンズの選び方から読んでください。
ADD:40代を過ぎると現れる欄
アディション(Addition)、加入度数。
近くを読むために、遠くの度数にどれだけ足すかを表します。
いつもプラスです。
+0.75から+2.50くらいまでです。
4つ目のわなです。
多くの箱には、数字の代わりにLOW、MID、HIGHと印刷されています。
同じ+1.50でも、あるブランドではLOW、別のブランドではMIDです。
数字をそのまま写さず、ブランドの換算表を確認しましょう。
ADDの値があるということは遠近両用レンズということで、その話は43歳、レストランのメニューが急に遠くなったに続きます。
ODとOS:ラテン語のなごり
処方箋の左側には、ODとOSがあります。
ODはOculus Dexter、右目です。
OSはOculus Sinister、左目です。
ラテン語です。何世紀も前の医学用語が、今も使われています。
RとLと書く眼科もあります。
大切なのは次のことです。
左右の度数が同じ人は、とても少ない。
片目だけに乱視がある人もたくさんいます。
だから30枚入りの箱は、片目の1か月分です。
両目なら2箱必要で、度数が違えば箱も違います。
もっともよくある注文ミスは、ここで起こります。
同じ度数を2箱買ってしまう、あるいは左右を取りちがえることです。
箱のどこに数字があるか
箱の側面に小さな表があります。
BCとDIAは、製品名の近くに固定の値として印刷されています。
PWRは箱ごとに印刷されています。
トーリックの箱にはPWR、CYL、AXISが1行に、遠近両用の箱にはPWRとADDが書かれています。
箱を開けると、どのブリスターにも同じ数字がくり返し印刷されています。
毎朝ブリスターをちらっと見るだけで、「左右を逆につけた日」を防げます。
ブランドによって、同じ数字の呼び方が違う
PWR、SPH、POWER、D。
DIA、DIAM。
BC、B.C.。
CYL、「乱視」。
AX、AXIS。
表記が違っても、値は同じです。
数字と符号(+か-か)を合わせれば、それで完了です。
処方にも有効期限がある
目は変わります。
度数も、角膜も、涙も。
だから多くの国で、コンタクトレンズの処方には有効期限があります。
アメリカでは、州によって1年か2年です。
「まだよく見える」というのは、度数のことしか教えてくれません。
角膜がどれだけ酸素を受け取っているか、小さな傷がないかは、自分では感じられません。
注文前の30秒チェックリスト
処方箋と箱を並べてみましょう。
- BCは同じか
- DIAは同じか
- PWRの符号と数字は同じか
- CYLがあるなら:トーリックレンズか、値は同じか
- AXISがあるなら:値は同じか(その角度がなければ、眼科に聞く)
- ADDがあるなら:遠近両用か、レベルは合っているか
- 左右で別々の箱を選んだか
- 処方はまだ有効か
8つすべてが合えば、どこで買っても同じレンズです。
1つでも違えば、手を止めましょう。
暗号を解けば、選べるようになる
処方箋を読めなければ、渡されたものを受け取るしかありません。
読めれば、自分で箱を確かめ、ブランドを比べ、まちがったものを返せます。
6つの暗号。
靴の形に2つ、見え方に4つ。
そして右と左。
3年間放っておいた紙は、10分で読めます。
参考資料
- 米国食品医薬品局、Contact Lenses
- 米国検眼協会、Contact Lenses
- 米国連邦取引委員会、The Contact Lens Rule
- 米国眼科学会、Contact Lens Prescription
この記事は一般的な情報です。処方の値は眼科の専門家が決めます。処方にないレンズの値を自分で選んだり変えたりしないでください。不快感があれば、レンズの装用をやめて専門家に相談してください。